桂枝湯(けいしとう)

軽めの風邪、発熱38℃前後までのひとに

桂枝湯のイメージ
桂枝湯のイメージ: 悪風
桂枝湯のイメージ。頭痛

体質

普段から虚弱体質。頬が赤く、動悸しやすい人など。

どんな風邪症状に飲むと良いか?

発熱すると顔が赤くなり(血管拡張)、汗ばむ。寒気がするが、がたがた震えるほどではない。頭痛がして風があたると寒く感じるひとに。のどもそれほど痛くない。のどはそんなに乾かない。軽めの風邪をひいたときに。

体温はどのように調節されているか?

体温下降に働く経路がやや優勢になっている人です。体温を高める必要がありながらも、血管が拡張してしまい、放熱・発汗しています。悪寒というよりは、風があたるのを嫌がる程度(悪風といいます)。

処方の解説

紀元3世紀の古典「傷寒論」では、桂枝湯を飲んだ後、しっかり栄養・水分補給をして、体を温めて休むことが推奨されています。傷寒論で「漢方を飲むのに加えて、外側からも温めるのがよい」、という意味の記載があるのは桂枝湯だけです。昔の人も、桂枝湯の作用だけでは風邪ウイルス撃退には力価が足りない、と考えていた印象を受けます。桂枝・生姜で体を暖める+桂枝湯だけでは温める作用は弱いため、外側からも熱を加える(着衣などで温かくする)+桂枝で発汗の作用を助ける、そんな処方です。

脈診

幅はあるが、底力のない、ちょっと押し込んでいけばもう触れなくなってしまう緊張感のない脈※1

※1 はじめての漢方診療十五話 三潴忠道著、医学書院

桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)

軽めの風邪、発熱38℃前後までのひとに

辛い肩こりに良く効く

体質

普段から虚弱体質。頬が赤く、動悸しやすい人など。

どんな風邪症状に飲むと良いか?

桂枝湯と同じ症状で、特に肩こりが目立つときによい。

発熱すると顔が赤くなり、汗ばむ。寒気がするが、がたがた震えるほどではない。のどもそれほど痛くない。のどはそんなに乾かない。軽めの風邪で、すごく肩がこるときに。

麻黄の副作用のため、葛根湯が飲めない人にもよい。

体温はどのように調節されているか?

桂枝湯と同じく、体温下降に働く経路がやや優勢になっている人です。体温を高める必要がありながらも、血管が拡張してしまい、放熱・発汗しています。悪寒というよりは、風があたるのを嫌がる程度(悪風といいます)。

処方の解説

桂枝湯に、肩こりを取り除く作用のある「葛根」を追加した処方。副作用はほとんどなく、平常時にも、肩こりに良く効くので院長は愛飲しています。東洋薬行株式会社のエキス製剤が医療用。このエキス製剤は、水にまず溶かしてから、温めて飲むとよいです。エキス製剤をいきなりお湯にいれるとダマになるのです。

脈診

指をあてると容易に触れるが、力のない緊張感のない脈

肩こりについて

桂枝加葛根湯は肩こりに効きますが一過性です。

凝り固まった筋肉は、血流が少なくなって微小な炎症が起きるので、炎症を抑える柴胡の入った漢方薬がおすすめです。(小柴胡湯、柴胡桂枝湯など。)

葛根湯(かっこんとう)

38℃を超える発熱、つらい全身症状、インフルエンザ、コロナ

葛根湯の症状
発熱初期のつらい肩こり

体質

ふつう~体力がある人

どんな風邪症状に飲むと良いか?

汗をかいておらず(無汗)、頭痛・肩こり、発熱、全身倦怠感がある人

熱がだんだん上がっていく段階にあり、寒気がして、がたがた震える。やけに肩がこって頭痛がして38℃まで発熱する。体温が高いが、汗が出ない!

体温はどのように調節されているか?

体温上昇に働く経路が優勢となっており、体温下降に働く経路は抑制されている。

処方の解説

葛根湯は、桂枝湯に麻黄と葛根を加えたものです。桂枝湯が適応となる人よりも炎症が強く、体温上昇経路が強くなり体温下降経路が働きにくくなっているため、強い発汗作用がある麻黄が必要となっています。体温下降経路を働かせる=適度に発汗させ体温が上がりすぎないようにする(麻黄・桂枝)+肩のこわばりをとる(葛根)+体温上昇経路の補助として体を温める(桂枝湯)。桂枝湯の役割で足りないところを、最低限補った処方、というイメージです。

脈診

指をあてると簡単に触れることができて、力のある脈

葛根湯の体験談

やっぱり、葛根湯は最高!と思います。中国は春秋戦国時代、今から1700年前の名処方です。

この間、頭痛がして発熱しました。早速、葛根湯の煎じ薬を作って早々と寝ました。すると夜中、ものすごい熱感で目が覚めました。あー、麻黄が体温上げてくれてるんだなー、と思いました。不思議と、麻黄による体温上昇は倦怠感も伴わずただただ暑いだけ。エアコンで室温を下げて、再度眠りにつきました。・・・これ以上はないくらいの深い眠りのあと、すっきりとした目覚めを経験しました。もちろん、発汗して解熱していました。

葛根湯、有名すぎて今更・・・な処方ですが、やはり、すごい!!と思いました。早く効果が欲しい感染症漢方こそ、煎じ薬を飲むとすごくいいです。煎じ薬、保険診療で提供している病院もありますので、お近くにあれば是非、処方してもらい飲んでみてください。