漢方薬の力を引き出し、十分に活用するためには、飲み方の注意点があります

下記項目をクリックしてください。

①空腹時に飲む

西洋薬のように構造が安定していないため、胃の中に食べ物があると吸収率は激減します。私がお勧めするのは、朝起きてすぐ、就眠前、の2つのタイミングです。就眠前に満腹のことが多い方は、日中の食間にお飲みいただとよいです。

②きちんとお湯に溶かして飲む ③温めて飲む

お湯に溶かして飲む
温めて飲む

エキス製剤の場合、粉のまま服用しても効果はありますが、お湯に溶かして粉状から液状に変化させることで、漢方薬が人体に吸収されやすい形に変わります。少しの手間ですが、多くの成分を吸収させることにつながります。

また、お湯に溶かし熱を加えることで、漢方薬の成分が活性化いたします。例えば、生のショウガ(成分: ジンゲロール)は口に含むとピリッとした辛味が特徴的ですが体を温める効果はさほど感じられません。しかし、温かいショウガのスープは体が温まりますね。これは、ショウガを加熱することで、成分がジンゲロールからショウガオールという、体を温める力が非常に強い成分に変化したためです。

煎じ薬もエキス製剤と同様です。温めることで、活性化する成分がたくさん含まれています。

是非、パックの中身をコップに注いだあと、レンジで温めて服用してください。

豆知識1

黄連解毒湯は鼻血にもいいです。

常温で飲む漢方薬もあります。

三黄瀉心湯、黄連解毒湯: 熱を冷ますときや、出血症状に対して飲むときは温めずに飲む

小半夏加茯苓湯、五苓散: 吐き気に対して飲むときは、温めずに飲む

④漢方薬同士を混ぜない

2種類の漢方薬を飲むことは、よくあります。一緒にお湯に混ぜ合わせて飲むと楽ですが、漢方薬は混ぜないで飲むのが基本です。

混ぜない理由を、下半身のしびれや冷えによく飲まれる八味地黄丸を例にとって説明します。

八味地黄丸の中には、「附子ブシ」という体を温める+鎮痛作用の強い生薬が含まれています。附子は、アルカリ性なので、酸性の液によく溶けます。八味地黄丸の中には、山茱萸(さんしゅゆ)という酸性の果実が含まれているため、八味地黄丸を煮出した煎じ薬は、酸性に傾きます。この酸性の溶液のなかで、アルカリ性の附子が多く溶け出し、八味地黄丸としての効力が強く発揮されます。

ここで、別の漢方薬を混ぜてしまうと、附子の溶け出しに影響を与えてしまい、八味地黄丸の作用が弱まってしまう可能性も出てきます。

基本は、混ぜないで飲むことです。

⑤お茶やジュースで飲まない

鉄剤をお茶で飲まないことは有名です。お茶に含まれる、タンニン酸が鉄の吸収を妨げてしまうからです。漢方薬の中には、鉄を含む生薬が含まれている場合もありますので、ご注意ください。

グレープフルーツジュースと一部のお薬の飲み合わせが悪いことも有名です。グレープフルーツジュースの成分は、お薬の代謝酵素を阻害します。よって、服用したお薬が代謝されずに体内に残ってしまい、副作用が起こりやすくなるという機序です。

漢方薬にも同じことが言えますが、グレープフルーツジュースがどの酵素を阻害して漢方薬の代謝を阻害する、という詳細がまだ分かっていません。また、前述のように、柑橘類のような酸性の飲み物と一緒に飲むことによりアルカリ性の生薬(麻黄、附子など)の溶け出しに影響を与えてしまいます。一緒に飲まないほうが安全と言えます。

⑥併用する西洋薬で気を付ける薬剤 その1 抗生剤

漢方薬の吸収の難しさについて、胃内容物があれば吸収率が激減するというお話をしました。胃を通過した後も、簡単に吸収されません。

漢方薬は、糖がついた成分が多いのですが、この糖のおかげで水溶性が高まり植物から有効成分を抽出することができています。が、同時に、人の体内では、水溶性ゆえに、脂質でできた消化管の膜を通りにくいという欠点も持ちます。経口摂取されたものはすべて、胃を通過して小腸から大腸に移動します。漢方薬は、その通過過程で、腸内細菌によって糖を外され、脂溶性となって初めて、体内に吸収される形となります。

抗生剤を飲むと、腸内細菌もダメージを受けます。そして、腸内細菌が減ってしまうことで、漢方薬の吸収に必要な、「糖を外す」という作用が弱くなってしまいます。つまり、抗生剤を同時に飲むことで、漢方薬の吸収は減少してしまい、十分な効果が得られない可能性があると言えます。

豆知識2

漢方薬の効果の個人差について

腸内細菌がよく働けば、漢方薬の吸収は多くなります。腸内細菌の働きが悪い人は、漢方薬の吸収が少なくなります。腸内細菌は、多様性で個人差が大きいことが、漢方薬が効く人と効かない人が出る理由の一つです。

腸内細菌により分解を受けて初めて吸収される生薬の例

甘草、柴胡、人参、大黄・センナ、芍薬、山梔子、黄芩など。これらを含む漢方薬に、抗生剤を併用する場合は、飲むタイミングを気を付けなければいけません。

⑥併用する西洋薬で気を付ける薬剤 その2 消炎鎮痛剤

ロキソニン、ボルタレンなど

風邪薬を例にご説明します。非ステロイド抗炎症薬は、体温を下げる方向に働きますが、麻黄湯や葛根湯などの漢方薬は、代謝を上げ、体温中枢に作用することで、体温を上げる方向に働きます。非ステロイド抗炎症薬と漢方薬を同時に飲むと、効果が相殺されてしまいます。

風邪ウイルスが体内に侵入してくると、白血球が戦ってウイルスを体外に排除する仕組みが働きますが、その白血球が活性化しやすい温度帯が37-38℃と言われています。本人の自覚としては、体温が高い状態はしんどいものですが、白血球が効率的に働けるためには、しっかり体を温めて休養することが一番となります。漢方薬は体温中枢に働きかけることで、体温を高めて白血球の手助けをするイメージです。自然治癒力を高めているといえます。